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【科学ニュース】ウイルスは協力して細菌の免疫機構を無力化する

細菌に感染するウイルスは、互いに協力して抗ウイルス防御機構を打ち破ることができることが、英エクセター大学の新しい研究で示された。

このようなウイルスはファージ(バクテリオファージ)として知られるが、研究では単一型のウイルスの粒子群が波状攻撃により、まず細菌の防御を弱め、次いで細菌を殺す様子を明らかにしている。

この発見は、生命を脅かす細菌感染症の治療で使われるファージ療法の効力を高める突破口となりうる。

細菌(バクテリア)にはCRISPR-Casのような防御システムがあり、感染するウイルスから身を守ることができる。武器開発競争と同様に、ファージはこの細菌の防御システムに対抗して、“抗CRISPR”と呼ばれる微粒子を装備した。

エクセター大学の研究では、単独のウイルスではCRISPR-Cas機構に完全には対抗できないが、十分な数の粒子が共存する場合は、“チームワーク”によってCRISPR-Casを克服して細菌群に感染できるようになることが示された。

「ウイルス粒子の数が十分であれば、有利に攻撃をしかけることができる」と、論文の筆頭著者でエクセター大学ペンリン・キャンパスにある環境・持続可能性研究所のマリアン・ランズバーガー(Mariann Landsberger)博士は話す。しかし、「ウイルスの数がこの分岐点より少ない場合、細菌への攻撃は侵入したファージの全滅に至るようだ。逆に、ウイルスの数が分岐点(閾値)を上回っている場合、複数のファージが同時に、あるいは相次いで1つの細菌に感染することにより打ち負かすことができる」。

「実際に観察された分岐点の説明としては、抗CRISPR粒子を持つ2つのウイルスが同時に1つの細菌を攻撃し、それによってCRISPR-Cas防御を不活性化する力を合わせて強化するということになる。ウイルスの数が多くなればなるほど、2つのファージが同じ細菌に同時に感染する頻度が高まり、このシナリオが実現しやすくなる」。

研究チームは、環境中に十分な数のウイルスが存在すれば、細菌の“連鎖感染”が生じて細菌群に流行蔓延となることがわかった。

このプロセスではまず、1つの細菌に侵入した最初のウイルスが細菌の免疫システムを抗CRISPR粒子によりCRISPR-Cas防御の一部をブロックして細菌を部分的に弱らせるが、細胞への完全な感染には至らず、ウイルスは最終的に、活性を失っていないCRISPR-Cas機構によって破壊される。

続いて、2番目のウイルスがこの生き残ったCRISPR-Cas防御を抗CRISPR粒子によって不活性化し、細菌への感染に成功して死に至らしめる。

共著者のシュティーニケ・ファン・ホーテ(Stineke van Houte)博士はこう述べる。「今回の研究は、ファージが協働して細菌の免疫機構を無効化できることを示したもので、これは人間の感染症治療にファージを使うことについて重要な示唆となる。使用するファージの投与によって、そのファージが細菌を殺せるかどうかを特定できるためだ。より一般的に言っても、ウイルスはその数が閾値を超えると疾患の急拡大が起こりえるという、これまで想定していなかった形で協働できることを示している」。

この研究は、エクセター大学の微生物学者チームが仏モンペリエ大学の協力を得て実施し、結果はCell誌に7月19日付で発表された。

【情報ソース】

Cell - Anti-CRISPR Phages Cooperate to Overcome CRISPR-Cas Immunity
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(18)30721-9
doi.org/10.1016/j.cell.2018.05.058

University of Exeter - Viruses cooperate to overcome immune defences of bacteria
http://www.exeter.ac.uk/news/featurednews/title_671133_en.html

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