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【科学ニュース】“空腹ホルモン”が脳細胞の成長を促進!?

断食で知力を高めることができるのだろうか? 主に胃で分泌される食欲増進ホルモンが、新しい脳細胞の成長を促進し、さらに脳細胞を老化から守る働きがあることがわかった。これは、断食によって知力が鋭くなるとの説を裏付けるものかもしれない。

グレリンは当初、“空腹ホルモン”として知られるようになった。グレリンは、胃が空のときに分泌され、食物のない状態が2~3時間続くと血中濃度が上昇する。

グレリンにはそのほかに、認知能力を高めることができる証拠もある。カロリー制限の食餌を与えた動物は知能が向上し、その要因の一部はグレリンである可能性がある。マウスへのグレリンの投与によって学習効果と記憶テストの成績が上昇したが、そのとき脳内のニューロン結合が増加していたと見られる。

英スウォンジー大学医学部准教授のジェフリー・デイビース(Jeffrey Davies)氏の研究チームは今回、神経発生と呼ばれる脳細胞の分裂と増殖のプロセスを促進する能力がグレリンにあることを示す新たな証拠を発見した。シャーレで培養したマウスの脳細胞にグレリンを与えたところ、神経発生を引き起こす遺伝子、線維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)のスイッチが入ったのだ。

◆新しい記憶

生体でも同じ効果が生じるとすれば、これはグレリンがどのようにして記憶に影響を与えるのかを示すものだとデイビース氏は述べる。今回の研究は、今月開催された英国神経科学会の会合で発表された。

若い脳細胞は、新しい記憶の形成能力を改善すると考えられている。これは、若い細胞は興奮しやすいために、新しい環境によって活性化されやすいせいである。「このようなニューロンは古いニューロンより容易に発火し、新しい記憶を機能させる」とデイビース氏は言う。

今回の研究は、ある種の脳細胞の欠損によって起こるパーキンソン病などの神経変性疾患の治療についても示唆を含んでいる。チームの一部も加わっていた以前の研究で、グレリンがパーキンソン病の一部症状の悪化を防ぐ効果を持つことがわかっている。

デイビース氏のチームは新たな実験で、シャーレ内でパーキンソン病を模した状態におかれた脳細胞が、グレリンのおかげで細胞死を免れることを発見した。また、同チームのアマンダ・ホーンズビー(Amanda Hornsby)氏がパーキンソン病による認識機能障害を持つボランティア28人を調査したところ、障害のない人に比べて血中グレリン濃度が低いことがわかった。

これは、グレリン(または同様な機能を果たす他の化学物質)がパーキンソン病性の認識機能障害の治療に利用可能であることを示している。

◆断続的な絶食

1日の推奨摂取カロリーを25%程度下回る食事を定常的に続けると、血糖値が正常値に維持されるなど、人の健康には複数のメリットがあるとされる。こうした食生活を続ける人の中には、認識能力も高まると言う人もいる。この点については議論があり、人の知的能力を損なうことを示す研究もある。

カロリー制限ダイエットの健康面での利点を生かすために、一部では断続的な絶食を推奨している。例えば、1週間のうち5日は通常の食事を摂り、2日は500カロリー程度に抑えた食事を摂る「5-2ダイエット」によって、グレリンのレベルが上昇するという。

ただし、独マックス・プランク精神医学研究所のニコラス・クナート(Nicolas Kunath)氏は、新しい脳細胞は活動を開始するまでに数日から数週間を必要とするので、断食によってグレリンが知力に直接的な影響を与えることを期待すべきではないと指摘している。

【情報ソース】

New Scientist - Hungry stomach hormone promotes growth of new brain cells
https://www.newscientist.com/article/2128695-hungry-stomach-hormone-promotes-growth-of-new-brain-cells/

Neuroimage - Ghrelin modulates encoding-related brain function without enhancing memory formation in humans.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27402596

Psychoneuroendocrinology - Short-term calorie restriction enhances adult hippocampal neurogenesis and remote fear memory in a Ghsr-dependent manner
http://www.psyneuen-journal.com/article/S0306-4530(15)00926-9/abstract

Swansea University - Research finds effects of calorie restriction on the brain may help promote healthy ageing and combat neurodegenerative disease
http://www.swansea.ac.uk/media-centre/news-archive/2015/researchfindseffectsofcalorierestrictiononthebrainmayhelppromotehealthyageingandcombatneurodegenerativedisease.php

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