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【科学ニュース】語彙の格差は乳幼児期に決まる

乳児でも、母親や父親と会話することができる。赤ちゃんが発するのは、言葉ではなく笑みや喃語ばかりであっても。これは、親が赤ちゃんとの会話を増やすよう指導し、その様子を記録するアメリカで進行中のプログラムの中心的な課題である。

プログラムの目的は、高収入の家庭の子どもは低収入の家庭に比べ、学齢に達するまでにはるかに多くの言葉を聞いて育っているという“語彙の格差(word gap)”をどのようにして埋めるかという点にある。新しい研究では、早期の介入によって危険のある子どもが聞く言葉を増やすことができ、就学レベルの学力形成に一定程度の影響を与えられる可能性が提示されている。

米ロードアイランド州プロビデンスで実施されているプログラムでは、子どもが一日に家族など面倒を見る人から聞く言葉の数(テレビなどは除く)をカウントする“語数計(word pedometer)”を首にかけて記録している。ニューヨーク市の別のプログラムでは、「だあだあ」さえ言えない幼い赤ちゃんとの会話を続ける親たちの様子をビデオに記録している。

「親は例えば、“やったことを見てください。私が音を立てると、子どもは私に微笑んでくれました”と話してくれる」と、ニューヨーク大学医学部のアラン・メンデルソーン(Alan Mendelsohn)博士は語る。「そこに込められたパワーは、実際に大きな意味がある」。

この研究は、ボストンで開催中(2月16~20日)のアメリカ科学振興協会(AAAS)年次総会で17日に発表された。

赤ちゃんに単純に話しかけることに意味があり、それは早ければ早いほど良いことは以前からわかっていた。画期的とされる1995年発表の研究では、貧困家庭の子どもが聞く言葉は裕福な家庭より大幅に少なく、その差は3歳までに合計で3000千万語にも達すると指摘している。理由はいくつもある。例えば、母親が掛け持ちする仕事で疲れ果てていれば、眠る前に物語を話して聞かせることもなくなり、子供服のプリントを指して「この子ブタちゃんは…」と話すこともなくなるだろう。

このように育った子どもは語彙が少なく、学習進度が遅れ、追いつくのも難しくなる。これは一部には、決定的な意味を持つゼロ歳時に脳の発達がその時期の経験に依存するためと考えられている。

前記のようなプログラムは全米各地で行われ、“レッツ・トーク”メッセージが広がっている。こうした赤ちゃんへの働きかけ(介入)が実際に機能することを示すデータはまだあまりなかったが、今回の発表では初期段階ながら有望な発見について概説され、問題は言葉の数だけでないことも示された。

「たくさん話すことはできても、その言語のクオリティはどうだろうか?」と、プロビデンス・トーク・プログラムの実施責任者ケイトリン・モリーナ(Caitlin Molina)氏は述べる。「大人の言葉の数だけでなく、子どもを引き込む会話としてのやり取りが重要だ」。

プロビデンス・トークは、2014年から1300人以上の乳幼児が参加し、毎日より多くの会話が実施できるように親たちの指導を進めている。最初にコーチは戦略を提供する。本を読むだけでなく挿絵について質問する、自動車のラジオを消して行き先について話す、子どもに着せた服の色を描写したら少し待って子どもの反応をうながす、などなどだ。

そして2週間のうち1日は、子どもが聞く語数と会話のやり取りの回数をカウントする小さなレコーダーを装着する。レコーダーは、子どもが返す喃語をカウントするが、テレビやラジオの音声は除外できる。親たちにはスコアが与えられ、進み具合を確認できる。

初期段階の結果では、参加家族の3分の2で向上が見られた。プログラム開始時に1日平均8000語を聞いていた子どもたちが、コーチングが終わるころには1日平均1万2000語になったとモリーナ氏は述べる。

ブラウン大学のチームは、これらの子どもたちが幼稚園に通い始めて以降に有意な違いが認められる言語能力の向上があったかどうかを確かめる調査を独自に開始した。

ニューヨークでメンデルソーン氏は小児科研究室で、通常の小児科医としての訪問健診を待機するかたわら、親たちの指導プログラムを研究している。指導に当たるコーチは、本や玩具などの小道具を使って、会話と引き込みの進め方について説明し、親たちの取り組みを記録している。ビデオを詳細に検討して、その親の言動のどこが良いのか、どこが向上したかを指摘する。

400世帯以上の低所得家庭は、ビデオを通したコーチングか標準的な小児科医の訪問かが無作為に割り当てられた。3歳までに、プログラムに参加した子どもたちは、物まね遊びや注意力で向上が見られ、過活動が抑制されたとメンデルソーン氏は報告している。同氏は、研究対象の最初の子どもたちが幼稚園の学齢に達するまで追跡して、プログラムの効果が継続しているようだと述べている。

【情報ソース】

AAAS 2017 Annual Meeting - Bridging the Word Gap by Linking Pediatric Health Care and Community Services
https://aaas.confex.com/aaas/2017/webprogram/Paper19295.html

MedicalXpress - Talk to babies and let them babble back to bridge word gap
https://medicalxpress.com/news/2017-02-babies-babble-bridge-word-gap.html

【参考】

Rice University - The Thirty Million Word Gap
http://literacy.rice.edu/thirty-million-word-gap

「3千万語の格差」研究から見える、日本の子どもたちの課題 (社会心理学者の個人サイト)
http://itsumikakefuda.com/child_language1.html

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