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【竹内薫:科学エッセイ】3人目のノーベル物理学賞

 東京大学の梶田隆章さんがノーベル物理学賞を受賞した。ニュートリノ振動という、素粒子物理学における画期的な業績が評価されたのだ。

 私が司会を務めるNHKサイエンスZEROという科学番組でも、今回のノーベル賞を採り上げ、梶田さんご本人にスタジオにお越しいただいた。実は、梶田さんには、1年前にも番組にご出演いただいていて、そのときは「数年以内にノーベル賞を受賞されるのかなぁ」と考えていたが、数年どころか、1年後のめでたい受賞となった。

 ニュートリノ関連では、2002年度のノーベル物理学賞を小柴昌俊さんが受賞されたが、梶田さんは、小柴さんのお弟子さんだ。日本は、ニュートリノというちっちゃなちっちゃな素粒子で二度もノーベル賞を受賞したことになる。

 いや、本当は、三度、ノーベル賞を受賞するはずだったのだ。小柴さんと梶田さんの「間」に戸塚洋二さんという物理学者がいた。小柴さんの後を継いで、スーパーカミオカンデの責任者となり、ニュートリノ振動の発見に大きく貢献したが、2008年、直腸ガンのため亡くなった。

 今回のノーベル物理学賞は、梶田さんとアーサー・B・マクドナルドさんの2名が受賞した。通常、物理学賞の「枠」は3名までだ。ニュートリノ振動実験には、大勢の物理学者がかかわっているから、本来なら3名の受賞となってもおかしくなかった。だが、私は、ノーベル賞の選考委員会が、あえて2名とし、残りの1つの枠を戸塚さんに捧げたのだと感じた。

 私自身は、学生時代、戸塚先生の授業を取ったこともあり、先生があと7年長生きして、3名で受賞してくれたらどんなに良かっただろうにと残念に思った。だが、ノーベル賞選考委員会の粋な計らいに、ちょっぴりだが、気が晴れた。戸塚さんも、きっと、お弟子さんの梶田さんの授賞式を天国から見守って喜んでくれたはずだ。

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