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【科学ニュース】抗体の消滅で慢性疲労症候群が緩解

「完全に生き返ったようでした」とカレン(仮名)は言う。「突然、社交的になれました。仕事に出かけ、家に帰り、夕食をとり、それでもまだ何かしたいと感じました」。

血液の癌(がん)であるリンパ腫と関節リウマチの治療に通常用いられる薬を飲んでいる間、カレンは慢性疲労症候群(CFS)がこのように軽減されることを体験した。

彼女は、ノルウェーのベルゲンで行われた小規模な治験の一部としてリツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)の投与後に症状の改善が報告された18人のうちのひとり。この結果は、人を疲れ果てさせ家に縛りつける症状に対する新しい処方につながる可能性がある。

リツキシマブ服用前の状態を、カレンは次のように語っている。「本当にひどい状態でした。教師としての仕事ができず、まったく何もやりくりできませんでした。ただただエネルギーが出ない。集中できず、関節と筋肉が痛かったんです。手紙をポストに出しに行くだけで、フルマラソンを走ったように感じました」。

CFSの原因を見つけるのはずっと困難だった。マウスのウイルスが原因とする説は4年前に否定され、一部は心因性ではないかと考えられていた。

最新の研究では、少なくとも一部の症例では免疫系との関連が示された。リツキシマブは、抗体を産生するリンパ球の一種であるB細胞のほとんどを一掃する。

ベルゲンにあるホーケランド大学病院(Haukeland University Hospital)のオイステン・フルーゲ(Øystein Fluge)氏とオラフ・メーラ(Olav Mella)氏は2004年、たまたまCFSの症状もあったリンパ腫患者にリツキシマブを投与した際、CFSに対して現れた効果に着目した。

数カ月後、その患者のCFSの症状はすっかり解消された。2011年に行われた小規模な1年間の治験では、リツキシマブを投与された患者の3分の2が(対照群との比較はなかったが)安心を得られたとの結果が出た。

そして、CFSの症状がある29人を含む最新の研究では、リツキシマブを繰り返し投与すると症状が何年も現れなくなることが明らかになった。

「対象患者18人のうち11人は、処置の開始後3年たってもまだ緩解期で、一部は5年後の今でも症状が出ていない」とフルーゲ氏は話す。「突然かれらの四肢は動き始め、手は冷たくもなく汗ばんでもいなかった」。

「リツキシマブの物語にとても興味を引かれる」と、米フロリダ州にあるノバサウスイースタン大学に所属するCFSの権威ナンシー・クリマス(Nancy Klimas)氏は言う。「人々がとても長い緩解期間を経験し、回復したと話すことさえあったことは特に感動的だ」。

◆重要な手掛り?

研究者は、CFS患者の少なくとも一部は自身の抗体が原因であると考えている。緩解はリツキシマブの服用開始から4~6カ月後に始まった。これは、既存の抗体が身体からすっかり消えるのに要する時間に相当すたる。治験参加者は、約1年後に症状が再発した。B細胞が再び産生され、新たに抗体を作り始めるまでの期間に当たる。

「緩解と再発のパターンには、この抗体についての何らかのメカニズムが関与していると考えられる」とフルーゲ氏は言う。

何らかの感染症が、人体の組織に敵対するような抗体の産生を促している可能性もあるとフルーゲ氏は話す。同氏の研究チームは、この抗体が血液の正常な循環を止め、人体が十分な酸素を取り込むのを阻害することがひどい疲労を引き起こしているのではないかと疑っている。

研究チームは、この理論がまだ推測の域を出ないことを指摘するが、非常に予備的ながら証拠はいくつか見つかっているという。「この抗体が人体の血管システムを標的としており、患者には非常に低い嫌気性圧力があり、不要の乳酸塩を初期から生産して筋肉の動きを止めると考えている」とメーラ氏は述べる。

この理論が正しいとわかれば、CFS患者が筋肉疲労に苦しみながらも筋肉異常の兆候を示さない理由を説明できる。

精神医学的な治療に目を向けていた臨床医も、この発見を歓迎している。「このリツキシマブの対照群なしの研究結果は、その効果について有望な兆候を示している」と、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のフレッド・フリードバーグ(Fred Friedberg)氏は話す。

現在、対照群を伴う150人規模の研究が進行中だ。2011年の研究では偽薬も含まれたが、そのあとの治験では採り入れられず、偽薬効果に関しては弱さが残っていた。

しかし、冒頭のカレン個人はリツキシマブの効果が本物だったと確信している。「それは、絶対に100パーセント現実でした」と彼女が話している。「捏造できないものもあるんです」。

【情報ソース】

PLOS ONE - B-Lymphocyte Depletion in Myalgic Encephalopathy/ Chronic Fatigue Syndrome. An Open-Label Phase II Study with Rituximab Maintenance Treatment
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0129898

NewScientist - Antibody wipeout found to relieve chronic fatigue syndrome
http://www.newscientist.com/article/dn27813-antibody-wipeout-found-to-relieve-chronic-fatigue-syndrome.html

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