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【科学ニュース】野生と家畜のウサギ、脳形態に明確な違い

スウェーデンを中心とする国際研究チームが、家畜化がアナウサギ(Oryctolagus cuniculus、以下「ウサギ」)の脳の形態にどのような変化をもたらしたかを高解像度MRIを使って調べた。その結果から、家畜化はウサギの脳形態、なかでも恐怖情動の処理に関わる脳領域(扁桃体と前頭前皮質内側部)に重大な影響を与えていたことがわかった。

家畜のウサギと対照的に、野生のウサギはワシやタカ、キツネ、人間などの狩りの対象となることから非常に強い逃走反応を示し、野生下では生存のために常に油断なく機敏に反応することを強いられている。チャールズ・ダーウィンも『種の起源』の中で、「野生の若いウサギほど飼い馴らすのが難しい動物はない。飼い馴らされた若いウサギほど従順な動物はめったにいない」と述べている。野生動物と家畜のこうした振る舞いの違いは、かなりの程度まで遺伝的に決定されていることは間違いない。

「以前の研究でわれわれは、野生と家畜のウサギの遺伝的な違いは、脳の発達時に発現する遺伝子周辺でとりわけ広く共通して見られることを報告した」と、主要著者のひとりでポルトガル、ポルト大学の生物多様性・遺伝子資源研究機関(CIBIO-InBIO)に所属するミゲル・カルネイロ(Miguel Carneiro)氏は説明する。「今回の研究では、こうした遺伝子の変化が脳形態の変化と関連するのかどうかを調べるために高解像度MRIを使うことにした」。

研究チームは、環境要因による変化を最小限にするため、家畜と野生のウサギ8頭ずつを非常に近い条件下で飼育した。さらに脳MRIデータは、対象の個体が野生か家畜かが研究者にはわからない状態で、精密な画像解析により解釈された。

「野生と家畜のウサギの脳には、大きな違いが3つ観察された」と、筆頭著者でスウェーデン王立工科大学の博士課程学生、イレーネ・ブルシニ(Irene Brusini)氏は述べる。「まず、野生のウサギは脳のサイズ(体重比)が家畜のウサギより大きい。次に、家畜のウサギは、扁桃体が縮小し、前頭前皮質内側部が拡大していた。そして、家畜のウサギでは白質構造に全体的な縮小が認められた」。

「これらの脳形態の違いは、野生のウサギに比べて家畜のウサギは恐怖情動が希薄で逃走反応が弱いという事実と、完全につじつまが合う」と、上級著者のひとりでウプサラ大学およびカロリンスカ研究所の教授、マッツ・フレドリクソン(Mats Fredrikson)氏は話す。「今回の結果は、家畜のウサギでは、恐怖を感知する領域(扁桃体)が小さく、恐怖への反応を抑制する領域(前頭前皮質内側部)が大きいことを示している。白質組織の縮小は、家畜のウサギは情報処理が一部で阻害され、野生のウサギに比べて反応が鈍く不活発であることの理由となりえることを示唆している」。

「今回の研究では、野生動物と家畜の脳形態の変化は家畜化によって押し進められたことを深く追究することができた」と、ウプサラ大学、スウェーデン農業科学大学、テキサスA&M大学のレイフ・アンデルソン(Leif Andersson)氏は話す。「研究の開始当初は、MRIでは見分けられない微妙な変化しかないのではと懸念されたが、まったく違って明確な変化を確認できた」。

「この研究の重要性は、動物の家畜化の理解についてだけでなく、脳形態の変化が恐怖反応のような複雑な行動にどのように影響するかについて基本的な理解が得られたことにある」とアンデルソン氏は述べている。

この研究は、Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)オンライン版に6月25日付で発表された。

【情報ソース】

PNAS - Changes in brain architecture are consistent with altered fear processing in domestic rabbits
http://www.pnas.org/content/early/2018/06/19/1801024115
doi.org/10.1073/pnas.1801024115

Uppsala University - Striking differences in brains of wild and domestic rabbits
https://www.uu.se/en/news-media/news/article/?id=11042&area=2,5,10,16,34&typ=artikel&lang=en

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