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【科学ニュース】月は遠ざかり、1日は長くなる

地球と月の長く深い関係の歴史を再構成した新しい研究によると、14億年前の地球は1日が18時間余りしかなかった。これは少なくとも部分的には、月が今より地球に近く、地球の自転のしかたが変化してきたことが理由だという。

「月が地球から遠ざかっていく動きは、フィギュアスケーターがスピンしながら腕を外に伸ばしていくようなものだ」と米ウィスコンシン大学マディソン校の地球科学教授、スティーブン・メイヤーズ(Stephen Meyers)氏は話す。メイヤーズ氏の研究チームは、Proceedings of the National Academy of Sciences誌に6月4日付で研究論文を発表した。

この研究では、ある統計手法をツールとして用い、天文学の理論を地質学の観察結果と結び付けて地球の地質学的過去を振りかえり、太陽系の歴史を再構築し、地層に記録された古代の気候変動を理解しようとしている。

「われわれの目的のひとつは、宇宙年代学を使って遠い過去の時間をとらえ、太古からの地質学的な時間軸を作成することだった」とメイヤーズ氏は言う。「何十億年も前の岩石についても、現代の地質学的プロセスを研究するのと共通する方法で研究できるようにしたいと思っている」。

宇宙空間での地球の動きは、力を及ぼす他の天体(他の惑星や月など)から影響を受ける。これは、地球の歳差運動、地軸の傾き、および公転軌道の離心率の変化となって現れる。

これらの変化は総称してミランコビッチ・サイクルとして知られ、そこから地球が受ける日射量の変化を割り出すことができ、さらに地球の気候変動のリズムが明らかになることも意味する。メイヤーズ氏もふくめ、研究者はこの気候リズムを数億年分にわたって岩石記録から読み取ってきた。

しかし範囲が数十億年に及ぶと、同位体年代測定のような代表的な地質年代測定手法ではこれらのサイクル(周期)の特定に必要な精度が得られないために、正確な結論を出すのが難しくなる。また、月の歴史については未知の部分が多いこと、そして1989年にフランス国立科学研究センターのジャック・ラスカル(Jacques Laskar)氏が提示した太陽系カオスと呼ばれる理論によって問題は複雑さを増していた。

太陽系には、太陽を回る軌道上を移動する天体がいくつも存在する。こうした移動天体の小さな初期変動は、数百万年・数千万年後には大きな変化へと増大していく可能性がある。これが太陽系カオスであり、これを明確に説明するのはバタフライ効果を逆にたどろうとするようなものと言える。

メイヤーズ氏らは昨年、地球の気候サイクルを“記録”した9000万年前の地層の研究で、太陽系カオスの“暗号を解読”していた。それでもまだ、岩石記録をさらに遡ろうとすればするほど、解析結果の信頼性は低くなっていた。

例えば、月は現在、年に3.82センチメートルずつ地球から遠ざかっている。この現在のペースを使って推計すると、「15億年以上前には、月と地球との距離は、相互の重力によって月の一部が引きはがされるほどの近さだった」とメイヤーズ氏は説明する。月の現在の年齢は45億歳である。

ここでメイヤーズ氏は、太陽系内の移動天体が数十億年前に何をしていたのかを説明できる道筋を探し、地球とそのミランコビッチ・サイクルに与えていた影響を理解しようと考えた。これは、長期休暇中の2016年にコロンビア大学のラモント=ドハティ・アース天文台で行った講演で自ら持ち出した問題だった。

その日の聴衆のひとりに、コロンビア大学のラモント記念教授で今回の研究の共著者であるアルベルト・マリンベルノ(Alberto Malinverno)氏がいた。「私はそのとき自分にこう言ったんだ、“どうやればいいかわかると思う。一緒にやろうじゃないか!”」。そう話すマリンベルノ氏は、当時は別の研究に関わっていた。「エキサイティングだったよ。いつもこれを夢見ている人がいて、私には問題を探す解決策があったんだ」。

ふたりはチームを組み、メイヤーズ氏が不確実性を扱うために2015年に開発したTimeOptという統計手法を、天文学理論と地質学データ、およびベイズ逆確率という統計手法と組み合わせた。

そしてチームはTimeOptMCMCという新しい手法を、中国北部の14億年前のシアマーリン(Xiamaling)層と大西洋南東部ウォルビス海嶺の5500万年前の地質の2か所から収集された岩石サンプルについてテストした。

このアプローチにより両氏は、不確実性にも対処しつつ、地球の自転と公転軌道について、比較的最近の時代と太古の時代における地質学記録上の変化を調べ、信頼のおける結果を得た。また、それぞれの時代の1日の長さを特定でき、地球と月の距離も算出することができた。

「将来的には、別の地質時代の期間にこのような研究を拡大したいと考えている」とマリンベルノ氏は言う。

今回の研究は、岩石記録とミランコビッチ・サイクルに基づいて地球の歴史と動きについての理解を深めようとした他の2つの研究を補完するものとなった。

1つは、コロンビア大学ラモント=ドハティ・アース天文台のチームが、地球の公転軌道が40万5000年の周期でほぼ真円と楕円との間で変動するという注目すべき規則性を確認した研究。もうひとつは、ニュージーランドのビクトリア大学を中心とするチームがメイヤーズ氏と協力のもと、地球の軌道と自転の変化がフデイシ(graptoloid)というカンブリア紀の海洋生物の進化と絶滅のサイクルにどのような影響を与えたかを4億5000万年さかのぼって調べた研究である。

「地質学記録は、初期の太陽系を観測する天文台だ」とメイヤーズ氏は言う。「岩石の中に保存された(太陽系天体の)脈打つリズムと生命の歴史を見ることができる」。

【情報ソース】

PNAS - Proterozoic Milankovitch cycles and the history of the solar system
http://www.pnas.org/content/early/2018/05/30/1717689115
doi.org/10.1073/pnas.1717689115

University of Wisconsin-Madison - Thank the moon for Earth’s lengthening day
https://news.wisc.edu/thank-the-moon-for-earths-lengthening-day/

Columbia University - In Ancient Rocks, Scientists See a Climate Cycle Working Across Deep Time
http://blogs.ei.columbia.edu/2018/05/07/milankovitch-cycles-deep-time/

stuff - Link between Earth's orbit and mass extinction found by Victoria University researchers
https://www.stuff.co.nz/science/103942399/link-between-earths-orbit-and-mass-extinction--found-by-victoria-university-researchers

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