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【科学ニュース】古代女性の腕力は現代の女性アスリート並み!?

古代農耕民の女性は日々の厳しい肉体労働のせいで、現代トップレベルの女性ボート選手と同じくらい強靭だったらしい。

農業の肉体労働は、特に犂(馬や牛に引かせるスキ)が発明される前はまったく容易なものではなかった。土を耕す、種を撒く、収穫する、穀物を挽いて粉にする。これらすべてを手で行わなければならず、使える道具は土掘り棒と、木の柄がついた原始的な石製の鎌しかない。その結果、古代の人々は現代人に比べてずっと筋骨たくましかっただろう。この理論は、骨の分析によって何度か確かめられているが、そのほとんどは男性の四肢を対象にしたものだった。今回、同種の研究では初めて女性の四肢が包括的に調査され、男性と同様な傾向が確認されただけでなく、際立った違いとして、中央ヨーロッパにおける約5500年間の初期農耕期の女性は強靭な上半身を備えていたことがわかった。

人の骨は生涯にわたって、前後左右に動かされ、物を持ち上げる、引っぱる、走るといった身体の動きを支える。人の骨は、個人の身体能力と全体的な生活様式について多くのことを語ってくれる。女性の骨は、妊娠期・授乳期に使用されるミネラルも貯蔵しているため、ある意味では男性以上に多くの情報が込められている。

ケンブリッジ大学人類学部で骨格生体力学を専攻するアリソン・マッキントッシュ(Alison Macintosh)氏は、この女性に特有の複雑さが、女性の骨がこれまでほとんど研究されてこなかった理由の一部だと言う。

「これまで研究はほとんど行われていない。今あるのが男性の骨に関する研究ばかりなのは主に、行動と骨の関係では女性より男性の方が複雑さが小さいためだ」とマッキントッシュ氏は話す。

そこでマッキントッシュ氏らは、中央ヨーロッパの新石器時代(紀元前5300~前4600年)、青銅器時代(前3200~前1450年)、鉄器時代(前850~紀元100年)、および中世(紀元800~850年)の各時代に暮らした女性の脛骨89本と上腕骨78本を、3Dレーザー画像化システムを使って解析し、モデルを作成した。また比較の基準として、ケンブリッジ大の女子学生からスポーツ選手(熟達した長距離走者、サッカー選手、ボート選手)と非スポーツ選手を十数名募集した。これら現在の女性については、CTスキャンにより骨の画像を取得した。「そして、特別なソフトウェアで骨の強度を数値化した」とマッキントッシュ氏。

このように骨を分析することで、腕と脚の強さを推定することができる。新石器時代の女性は、際立って強い四肢を持っていたことがわかった。女性の脚の強さは変化の範囲が大きく、現代女性(運動をせず勉強中心の女性からウルトラマラソンのランナーまで)の強さの範囲をすっかり包含されていた。しかし、腕についてはまったく話が違っていた。古代の女性は腕がきわめて強く、定常的に週100キロメートル以上漕いでいるボート選手より約16パーセント、競技はしていないが活発なレクリエーション活動をしている女性より30パーセントも、骨が大きかった。

「これは、農耕に携わっていた古代女性の日々の広範な活動が、脚にかかる負荷の面では変化が大きかったが、腕を使う労働としては一貫して現代のボート選手を上回る高いレベルの作業をこなしていたことを示している」とマッキントッシュ氏は述べる。

これは、農作業で必要とされる筋肉への負荷がこれまで大幅に過小評価されており、女性のそうした作業への関与も同様に見過ごされてきたことを示しているという。

「犂が発明されるまで、自給農業では耕うん・播種・収穫のすべてを人手で行わなければならなかった。女性は、家畜動物の水と食料の世話、乳と肉の処理、皮革の処理や羊毛から織物の作成といった仕事を受け持つ傾向が強かった」。

以降も長い間女性の腕は強かったが、技術の進歩につれて、こうした骨の折れる仕事の一部からは解放されるようになる。その結果、筋力は少しずつ低下し始めた。

「新石器代から青銅器時代まで、穀物は鞍形石皿(サドル・カーン)で処理されていたが、これは粉を挽くには時間のかかる非効率な方法だった。鉄器時代後期には、2枚の石を組み合わせた回転式の碾き臼(ロータリー・カーン)の使用が中央ヨーロッパで広がった。この新しい技術は効率が高く、時間が短縮され、同じ量の穀物を処理するのに必要な筋肉の活動が鞍形石皿よりも少なくなった。これが、鉄器時代から中世にかけて、女性の上腕骨の強さが低下していった理由のひとつではないだろうか」。

このような人類の発展の初期段階で、女性が重要な役割を演じていたのは注目すべき点だ。男女の間で日常の作業がどのように分担されていたか、正確には知ることができない。この分担を解明する難しさが、特定の骨に残されたサインを読み解くことを難しくしていると言える。

「古代の女性に見られる骨への荷重の変化は、初期農業で幅広い作業が行われていたこと示している。実際のところ、骨から特定の作業のサインを特定するのをこれほど難しくしているのは、女性の作業の幅広さそのものだと考えている」と、マッキントッシュ氏は結論づけている。

マッキントッシュ氏らは今後、農業革命に続いて生じた栄養の変化が、古代人類の生活様式にどのような影響を与えたのかを研究しようと計画している。

この研究結果は、Science Advances誌に11月29日付で発表された。

【情報ソース】

Science Advances - Prehistoric women’s manual labor exceeded that of athletes through the first 5500 years of farming in Central Europe
http://advances.sciencemag.org/content/3/11/eaao3893
DOI: 10.1126/sciadv.aao3893

Sci-News - Study: Prehistoric Women Were Stronger Than Today’s Female Athletes
http://www.sci-news.com/othersciences/anthropology/prehistoric-women-stronger-todays-female-athletes-05482.html

ZME Science - Prehistoric women had strong, bulky arms -- more powerful than today’s athletes
https://www.zmescience.com/science/news-science/prehistoric-women-arms-powerful-30112017/

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