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【科学ニュース】お腹の脂肪の燃焼に抗うつ剤が有効!?

お腹の脂肪は、心疾患や2型糖尿病などの慢性疾患にも関係があり、時には死につながることもある。しかし、年をとると、この脂肪を落として体重を減らすのが難しいことは多くの人が認識している。新しい研究で、免疫細胞の炎症がこの問題の要因であるらしいことがわかり、既存の薬剤が腹部脂肪の燃焼に役立つ可能性があることも指摘された。

イェール大学を中心とする研究チームは、神経系と免疫系が代謝と炎症を制御するためにどのように“対話”しているのかを説明した。その研究結果は、慢性疾患のリスクを高める高齢者の腹部脂肪を燃焼させるのが難しい理由を示している。研究チームはまた、高齢者の腹部脂肪に対する治療的アプローチの可能性についても指摘した。

研究はイェール大学医学大学院の比較医学・免疫生物学教授、ヴィシュワ・ディープ・ディクシット(Vishwa Deep Dixit)氏が主導し、テネシー大学健康科学センターおよび独ボン大学の研究者の協力を得て、Nature誌に9月27日付で発表された。

高齢になると、体重に関係なく腹部の脂肪が増加する。エネルギーを消費する必要があるとき、高齢者では細胞内の脂肪が若い人ほど効率よく燃焼せず、腹部に有害な脂肪が蓄積してしまう。このような反応の鈍化がなぜ起こるのか、理由はわかっていなかった。

研究でディクシット氏らは、通常は感染の制御に関与するマクロファージという特殊な免疫細胞に注目した。ディクシット研究室では、腹部脂肪の神経に常駐する新しいタイプのマクロファージを発見した。神経に関わるこのマクロファージは、加齢とともに炎症を起こし、神経伝達物質が正しく機能するのを妨げていることがわかった。

研究チームは問題点を把握するために、若いマウスと高齢マウスの脂肪組織から免疫細胞を分離し、そのゲノムを解析してコンピューターモデル化した。「高齢(マウス)のマクロファージは、カテコールアミンという神経伝達物質を分解することができ、そのせいで、必要が生じても脂肪細胞が燃料を供給できなくなる(脂肪が分解されない)ことを発見した」とディクシット氏は述べる。同氏は、イェール大学老化研究センターのメンバーでもある。

研究チームが高齢マクロファージ内のNLRP3インフラマソームという炎症を制御する受容体を抑制したところ、カテコールアミンは若いマウスと同様に脂肪の分解を誘導する働きを示すことを確認した。

「重要なのは、免疫細胞が神経系に代謝を制御するよう伝えていることだ」とディクシット氏は話す。

さらにチームは、高齢マクロファージで増加するある酵素をブロックすることにより、高齢マウスで通常の脂肪代謝を回復させた。このモノアミン酸化酵素A(MAOA)は、既存の抑鬱症治療薬によって抑制されるとディクシット氏は指摘する。「理論的には、このようなMAOA抑制薬の対象を変えて、高齢者の代謝改善に用いることが可能だ」と同氏は言う。ただし、こうした薬剤を腹部脂肪の代謝を目的として使うには、さらなる調査と安全性のテストが必要だと述べている。

ディクシット氏らは今後、免疫細胞と神経系との相互作用をさらに調査し、その神経系と免疫系の対話が健康と疾患をどのように制御しているのかを探ろうとしている。高齢の免疫細胞の炎症を制御することで代謝が改善できるなら、神経系または老化の過程そのものに対して、ほかにも望ましい効果があるのではないかと研究チームは述べている。

「われわれの研究の目的は、免疫細胞と神経系および脂肪細胞との相互作用を理解し、腹部脂肪の減少、代謝の改善、そして高齢期の健康増進の可能性を高めることだ」と、研究論文の筆頭著者であるクリスティーナ・キャメル(Christina D. Camell)氏は述べている。

【情報ソース】

Nature - Inflammasome-driven catecholamine catabolism in macrophages blunts lipolysis during ageing
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature24022.html
doi:10.1038/nature24022

Yale University - Battling belly fat: Specialized immune cells impair metabolism in aging
https://news.yale.edu/2017/09/27/battling-belly-fat-specialized-immune-cells-impair-metabolism-aging

New Scientist - Common antidepressant found to reduce belly fat in older mice
https://www.newscientist.com/article/2148809-common-antidepressant-found-to-reduce-belly-fat-in-older-mice/

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