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【科学ニュース】“幸せ”な音楽は創造性を高める?

カフェに入るとたいてい、ヘッドフォンをして手や足でリズムをとっている人を見かける。創造的な活力をかき立てるにはエスプレッソも重要だが、どんな音楽を聴いているかも大きな意味を持っているようだ。新しい研究によると、“幸せ(happy)”なBGMには創造性を高める作用があるという。

研究チームは創造力を高める音楽について調べるため、155人の被験者を5つのグループに分けた。グループの1つは対照(コントロール)として、無音の状態で所定の作業を行わせた。他の4つのグループは、それぞれタイプの異なる音楽を聴きながら、さまざまなタイプのテストを受けた。

聴いている音楽のタイプによって、正確さや論理性が必要な深い思考を測る集中的思考テストの成績が上下することはないようだった。しかし、創造的思考とも言われる拡散的思考のテストでは、無音時のスコア76ポイントに対し、幸せな音楽を聴いていた参加者のスコアは94ポイントと大幅に高かった。このときのテストは、普通の古いレンガの使い方を思いつく限り数多く提示させるものだった。研究結果は、PLOS ONE誌に発表された。

「悲しい音楽、不安な音楽、静かな音楽でもテストしたが、このような効果は見られなかった」と、論文共著者でシドニー工科大学のサム・ファーガソン(Sam Ferguson)氏は話す。「単に音楽がかかっているだけでなく、その音楽のタイプが重要のようだ」。

この“幸せ”な音楽とはどのようなものだろうか? 研究チームはこれを、「ポジティブな性向(positive valence)」と「高い覚醒(high arousal)」を備えたクラシック音楽と定義している。テストで幸せを表すために用いられたのは、ビバルディのバイオリン協奏曲集『四季』の第1番「春」である。悲しさを表したのはサミュエル・バーバーの『弦楽のためのアダージョ』、不安はホルストの組曲『惑星』から「火星、戦争をもたらす者」、静寂はサン=サーンスの組曲『動物の謝肉祭』から第13曲「白鳥」だった。

では、幸せな音楽は創造性に影響を与えるのに、他の感情を表す音楽は影響がないのか? 研究に参加していないヘルシンキ大学のイルマ・イヤルベラ(Irma Järvelä)氏は、報酬系に関与して意欲や動機について役割を持つとされるドーパミンの放出を促すためではないかと指摘する。「ドーパミンは、創造的思考や目標指向的行動も促進する」。

原因がなんであれ、研究チームは明るい曲調の音楽を聴くことは創造的な思考を促進する安価な手段となりうると考えている。「マンネリから抜け出せないときには、深掘りするよりも、ほかの場所を掘ってみる方が効果があることもある」と論文では述べられている。

◆“モーツァルト効果”?

ただし、オフィスの音響環境を整えたり、ビバルディ全集を揃えようとするのはまだ早い。1993年にNature誌上で、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調(K.448)」の聴取後10分間は、他の音楽や単調な声を聴いた場合よりも、空間認識テストの成績が高かったという報告があった。著者のカリフォルニア大学アーバイン校フランシス・ラウシャー(Frances H. Rauscher)氏らが示したのは、この効果は音楽を聴いたあと10~15分程度しか見られず、また「空間認識」テストのスコアが向上したことのみだったが、モーツァルトを毎日聴くとIQが上がる「モーツァルト効果」としてもてはやされ、ジョージア州とテネシー州では新生児のいる家庭にクラシック音楽のCDを配布するまでに至った。

その後、この効果はモーツァルト以外の音楽でも生じるとする研究や、ラウシャー氏らの結果は再現できなかったとする研究なども発表されている。

ラウシャー氏はいまも元々の実験結果自体を疑ってはいないが、以降の研究で、何らかの効果があるのはモーツァルトに限らないことがわかった。聴く人が魅力を感じる音楽であれば同じ効果があり、静寂の中にいるときに比べて、脳には音楽が刺激になるためだという。

「カギは、その音楽を楽しむ必要があるということだ」とラウシャー氏は、2010年のNPRの取材で話している。「もしモーツァルトが嫌いなら、モーツァルト効果は生じない。もしパール・ジャムが大好きなら、パール・ジャム効果が見つかるだろう」。

ファーガソン氏らの今回の研究は、創造的な認知が音楽を通して高められる可能性を示している。今後のさらなる研究では、周囲のさまざまな音が創造性にどのように影響を与えるのかが探求され、また調査対象もさまざまな文化、年代、音楽経験のレベルの参加者が含まれるようになるだろう。研究チームは、「普段の生活でも、科学的・教育的・組織的な環境においても、創造的思考が必要なときには音楽の聴取は容易に組み込むことができる」と述べている。

【情報ソース】

PLOS ONE - Happy creativity: Listening to happy music facilitates divergent thinking
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0182210
DOI: 10.1371/journal.pone.0182210

Medical Xpress - Listening to happy music may enhance divergent creativity
https://medicalxpress.com/news/2017-09-happy-music-divergent-creativity.html

New Scientist - Need a creativity boost? Try listening to happy background music
https://www.newscientist.com/article/2146534-need-a-creativity-boost-try-listening-to-happy-background-music/

Smithsonian.com - Got Writer’s Block? Try Listening to Happy Music
http://www.smithsonianmag.com/smart-news/happy-tune-may-make-you-more-creative-180964813/

NPR - 'Mozart Effect' Was Just What We Wanted To Hear
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=128104580

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