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【科学ニュース】植物の構造は地下鉄ネットワークと類似

米ソーク研究所のチームは、植物の成長を3Dレーザースキャンで観察し、地下鉄のようなネットワークの構築で用いられる共通の設計基準(ユニバーサルデザイン)から、植物の枝分かれ構造の形状が導かれることを見出した。7月26日にCell Systems誌に発表された研究は、気候変動に適応して収量の増産や植物の成長を促進する方針の策定に寄与できるかもしれない。

「この研究は、エンジニアリング上の疑問から始まった」と、ソーク研究所統合生物学センターの助教で論文の上級著者であるサケット・ナブラカー(Saket Navlakha)氏は話す。「地下鉄システムや送電網など輸送ネットワークは、コストとパフォーマンスのような相反する目的の競合をどのように解決するのか? そして、植物は同様な競合する目的を同じ方法で解決しているのか?」

人が設計した輸送ネットワークは、運ぶものが人であれ電力であれ、構築のコストと提供できる輸送効率のバランスをどこでとるかが重要となる。地下鉄システムでは、設計時の主目的が郊外の住む人を可能な限り速く都心部に運ぶことであれば、各地域と都心部を直線的に結ぶ線を引けばよいが、それでは費用がかかりすぎる。逆に、費用の制限以外の目的がないなら、最小限の線だけを引くことになるが、一部の乗客にとっては時間がかかりすぎる。そこで、エンジニアリングの面から、この2つの目的をほどよくバランスさせる必要がある。このアナロジーを植物に適用する場合、幹の根元が都心部に、葉が各地域に対比される。各地域には栄養分を最短時間で運ぶのが望ましいが、枝を張るコストには制限がある。

エンジニアリングなどの分野で、このようなトレードオフは「パレート・フロント」と呼ばれる曲線のグラフで表すことができる。曲線の一端はパフォーマンスが低い非常に安価なシステムを、もう一端はパフォーマンスが高く高価なシステムを表す。曲線上の各点は、さまざまなコストとパフォーマンスの比率を表す。このフレームワークを植物に当てはめるとき、植物が枝を伸ばすためにエネルギーとリソースを使うことから、チームはコストを枝の総延長と定義した。また、植物の根元から各葉までの距離の合計(根と葉の間で水と養分が運ばれる総距離)をパフォーマンスと定義した。

この2つの目的間のトレードオフを植物がどのように扱うかを理解するために、ナブラカー氏のチームは、ソルガム(モロコシ)、トマト、タバコという農業的に価値の高い3種の作物からスタートした。3種の植物を、自然に存在するような環境(日かげ、定常光、強い光、高温乾燥)で種から栽培した。20日間にわたって数日ごとに各株のデジタルスキャンを行って、枝・茎・葉のネットワークの成長の様子を把握した。スキャンは、全37株について合計505回に及んだ。

「植物を3次元でスキャンするのに相当な時間がかかった」と、論文の筆頭著者でソーク研究所のアダム・コン(Adam Conn)氏は話す。「しかし、これは非侵襲的であり、一回やれば目で見ただけではわからないデータを発見できる」。

こうして得られた植物のデジタルデータからチームは、各株の根元と葉に対応する3次元座標を抽出した。その座標を使って、養分輸送の効率的な経路(パフォーマンス)と枝の最小限の長さ(コスト)、およびこの2つの目的間のさまざまなトレードオフについて優先順位をつける理論上の植物の形状を作成してグラフ化した。

現実の植物を、その実際の養分輸送距離と枝の総延長に従ってグラフ上に配置すると、各株はほぼ完璧にパレート曲線上に位置した。これは、各株の枝のネットワークがそれぞれの環境においてコストとパフォーマンスの最適なバランスをとるように構築されていることを示している。

「われわれの仮説は、(枝の)総延長と輸送距離が植物の重要な進化基準であるなら、その基準をともに最小化する進化圧が存在するだろうというものだったが、発見したのはまさしくそういうことだった」と、プロジェクトのポスドク研究員(当時)で現在はコールド・スプリング・ハーバー研究所の助教であるユーラス・ペドメール(Ullas Pedmale)氏は述べる。

興味深いのは、3種の植物は種ごとに共通性は示しながら、同じ種でも生育環境によって異なるトレードオフを見せたことだ。例えば、トマトはすべて曲線上の同じ領域内に位置したが、強い光で育ったトマトは弱い光で育ったトマトとはコストとパフォーマンスのバランスが異なっていた。

「これは、自らの構造を成長させる方針において、非常に共通性の高いネットワーク設計のトレードオフも最適化されていることを意味している。植物は、環境と種に基づいて、特定の科環境条件に対して異なる方法でトレードオフを選択している」とナブラカー氏は言う。「このようなトレードオフを理解できれば、気候の変化に応じて収穫をダイナミックに調整できるようになるかもしれない」。

論文共著者で植物分子細胞生物学研究所の所長であるジョアン・コーリー(Joanne Chory)氏はこう述べている。「この論文は、植物構造の成長と適応を導く新しい原則に光を当て、パターン形成を促進する分子メカニズムについて今後さらに追究すべき新たな疑問を提起している」。

【情報ソース】

Cell Systems - High-Resolution Laser Scanning Reveals Plant Architectures that Reflect Universal Network Design Principles
http://www.cell.com/cell-systems/fulltext/S2405-4712(17)30291-0
doi.org/10.1016/j.cels.2017.06.017

Salk Institute - How plant architectures mimic subway networks
http://www.salk.edu/news-release/plant-architectures-mimic-subway-networks/

ZME Science - Plant roots grow much like subway systems. Or is it the other way around?
http://www.zmescience.com/science/biology/plants-subway-system-26072017/

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