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【科学ニュース】肥満は病気、食物は毒の媒介者:YES/No?

肥満に病気というレッテルを貼り、魅力的な食べ物を病原体に喩えることまでする風潮が高まっている。これは、何の役にも立たない。英国のライター、ララ・ウィリアムズ(Lara Williams)氏は、New Scientist誌への投稿記事でそう述べる。以下は、同記事の概要。

肥満は「慢性で再発性がある進行性の疾患の経過」であり、食物はそうした「病気の媒介者」としてとらえ直すべきなのだろうか? 世界肥満連合(World Obesity Federation)はこれを疫学的な視点でとらえ、新しい声明で「イエス」と述べている(Obesity Reviews誌5月10日)。これを根深い問題のある言葉と見る人は「ノー」と言う。

このようなアプローチは、すでに明らかな医療対象である肥満した身体を悪化させるだけであり、健康状態を測る際に体重とサイズが他の要素を見えにくくする危険がある。体型に視野狭窄的に固執することで、合理的な医学的問題点が脇に追いやられている。

これは、肥満に関する議論から人間性を奪い、無益な説教と公的な辱めで煽り立てている。多くの社会で肥満恐怖症がはびこり、メディアは太った身体を曲解して表現し、肥満を高圧的に辱め、非難する。

身体の特定の形状を疾患と結びつけるのは、精神的な傷を深める恐れがあり、残酷であるうえに、基本的に直観と相容れない。太っていることを恥じることは体重減少に寄与しないことは、証明されてはいないが、体重の増加に強く関与することはある。

このような疾患の議論は、けして新しいものではない。肥満をこのように位置づけるべきかどうかは、100年以上前から議論されてきた。世界肥満連合の新しい声明は、疾病は単に「人の心が作りだす抽象的な概念」であるという1923年の言説を引用している。であれば、肥満も同様ではないのか?

◆食品の関連づけ

これは、まったくもって問題でしかない。食品を“毒物”の媒介者として分類する。

「食品は、肥満に関する主要な環境的作用因子である」と声明は主張する。「美味しく、安価で、便利な食品」。問題は、食品に関連する幅広い言葉が、現在ほど誤って医学的にとらえられたことはなかったという点だ。これは“健康(wellness)”ムーブメントを通じて半ば恒久化され、最近の料理本の多くが食品を多種多様な病気と戦う手段として扱っている。

ベストセラーとなった『The Art of Eating Well(健康に食べる技術)』(Jasmine and Melissa Hemsley, 2014, powerHouse Books)は、自閉症と糖尿病に効果があると主張する似非療法であるGAPSダイエットによって知られることになった。食に関する提言者の中でも著名なエラ・ウッドワード(Ella Woodward)氏は、加工食品や精製食品を減らし、植物ベースの製品を多く摂ることが、投薬治療で改善しなかった自身の起立性頻脈症候群に効果があったと述べた。

食物を病原体と同一視することは、食べる物に医学的な力を振り向ける疑似科学的文化への重心を大きくする危険がある。これは、グルテンは毒、炭水化物はジャンク、ハンバーガーは汚ないといった主張を繰り返す。その逆は“清潔”で“明るい”(clean and light)とばかりに、ある特定のタイプの食品を礼賛する。

このような言葉の対応付けに問題を感じないだろうか? 清潔:純粋・良好。汚ない:病気・悪い。(後者の)特定のタイプの食品を食べることは、いつの間にか恥ずべき罪の意識に支配された不義の行動となってゆく。

そして、われわれは行き場を失うことになる。

【情報ソース】

New Scientist - Call obesity a disease and food a pathological agent? No thanks
https://www.newscientist.com/article/2131589-call-obesity-a-disease-and-food-a-pathological-agent-no-thanks/

Obesity Reviews - Obesity: a chronic relapsing progressive disease process. A position statement of the World Obesity Federation
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/obr.12551/abstract

Science Daily - Experts argue that obesity is a chronic, relapsing, progressive disease
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/05/170510115222.htm

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