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【科学ニュース】妊娠がセリーナのパフォーマンスを高めた?

女子テニスのトップ・プレイヤー、セリーナ・ウィリアムズさんが第1子を妊娠していることがわかった。19日に本人がSnapchatに、自身の写真に「20週」と添えて投稿。広報担当者も、あとから妊娠を認めた。セリーナさんは1月の全豪オープンで優勝しているが、試合の行われた1月17日~28日は妊娠7週~8週だったことになる。

4大大会シングルス23回目の優勝を飾り、世界ランキング1位も7回目となった現代最高の女子テニス・プレイヤーには、妊娠もなんら障害にならなかったようだ。

妊娠中は適度な運動は推奨されるが、初期とは言えテニス・トーナメントのような激しい運動(12日間で7試合)に問題がなかったのかの懸念とともに、セリーナさんのアスリートとしての体調管理を賞賛する声も上がっている。祝福と賞賛がほとんどのSNSやメディアの中で、1つ気になる記事がNew Scientist誌に掲載された。

記事によると、むしろ妊娠中であることがアスリートとしてのパフォーマンスを高めた側面があったのではないかという。

◆“標高差効果”

妊娠が女性の身体に与える影響のひとつに、赤血球量の増加がある。スウェーデン・スポーツ健康科学大学(GIH=Gymnastik- och idrottshögskolan)のカリン・ラーセン(Karin Larsén)氏は、心臓からの血流量は妊娠初期の3か月で約10パーセント増加すると述べる。

以前から一部のアスリートは、高地トレーニングによって赤血球量を高めようと試みている。その効果は少なくとも数日間は続き、アスリートが低地に戻ったときに酸素量が増加する。妊娠中は心臓自体も大きくなり、筋肉で使用できる酸素量が増えることにつながる。

ただし、こうしたことがアスリートのパフォーマンスを高めるかどうかについては専門家の間でも意見が分かれる。ミシガン州立大学のジェームズ・ピバルニク(James Pivarnik)氏は、妊娠中期に入るまで重要な変化は生じないと述べる。その頃にはおそらく、体重の増加分(を動かすエネルギー)がパフォーマンスの向上を上回るだろうという。

◆ホルモンレベル

妊娠によって持久力が高まる可能性のある要因として、ホルモンレベルの変化がある。妊娠した女性のエストロゲンとプロゲステロンの上昇は、代謝を変化させ、炭水化物より脂肪の分解を促進する。これによって、炭水化物のエネルギーをより長く蓄えておくことができ、競合者を圧倒する推進力を得ることが可能になる。しかしながら、これは単なる理論にすぎないとピバルニク氏は言う。

これと似た理論として、1970年代から80年代に東側諸国で行われていたといわれる“中絶ドーピング”がある。妊娠初期のホルモン状態が筋力向上に適することから、競技の前に人工的に妊娠させ、のちに中絶するという“荒療治”だ。

「妊娠はドーピングとは認識されない」と、英国アンチ・ドーピング(UKAD)のニック・ウォジェック(Nick Wojek)氏は話す。「妊娠に関する規定はなにもなく、選手が(それをドーピングとして)行っていることを証明するのは非常に難しいだろう」。

そうはいっても、中絶ドーピングは危険な戦略であると、エセックス大学のクリス・クーパー氏は述べる。「それで恩恵があるのかないのか、きわめて個人的なことであるとは思う。(実際にあったとしても)真相のどうこうではなく、逸話として幕を閉じるような話だろう」。

最後に、New Scientistの記事も本稿も、セリーナさんが妊娠のおかげで全豪オープンに優勝できたとするものはなく、パフォーマンスをいくらか高めた可能性があることを指摘しているに過ぎないことをお断りしておく。ブックメーカーがこぞって1位のオッズを付けたその強さは、決勝までの7試合で1セットも落とさず“完全優勝”を飾るという圧倒的なものだった(妊娠していなかったら、1セットぐらいは落としていたかもしれないが)。

【情報ソース】

Is Serena Williams’s pregnancy making her a better athlete?
https://www.newscientist.com/article/2128439-is-serena-williamss-pregnancy-making-her-a-better-athlete/

BBC - Serena Williams: How can you win a Grand Slam while pregnant?
http://www.bbc.com/sport/tennis/39653317

セリーナ・ウィリアムズ、妊娠中に世界4大大会で優勝していた(ハフィントンポスト)
http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/19/story_n_16117322.html

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