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【科学ニュース】“負の質量”を持つ流体を作成

ワシントン州立大学(WSU)の物理学者チームが、負の質量を持つ流体を作成した。比喩的でない文字通りの意味で「負の質量」である。それを押すと、われわれが知っている世界にある物体とは異なり、押した方向には加速せず、反対方向に加速するのだという。

このような現象は研究室の環境でもめったに作成されないが、宇宙に関する謎の多い概念(例えばブラックホール)を探求するために利用できるだろうと、WSU物理天文学部助教のマイケル・フォーブス(Michael Forbes)氏は言う。この研究は、Physical Review Letters誌に4月10日付で発表された。

仮定の上では、正の電荷と負の電荷があるのと同じように、物質も負の質量を持ちうると考えることはできる。しかし、普段はこんなことを考えることはほとんどなく、通常の世界ではニュートンの第2法則(F=ma:力Fは、質量mと加速度aを掛けた結果に等しい)の正の面しか目にすることもない。

つまり、物を押せば、その物には押した方向に加速がかかる。質量は、力の方向に加速する。「それが、慣れ親しんできた物だ。負の質量を持っている物体は、押すと、押した人の方に加速する」とフォーブス氏は話す。

◆負の質量の条件

フォーブス氏らの研究チームは、ルビジウム原子を絶対零度近くまで冷却することでボース・アインシュタイン凝縮(Bose-Einstein condensation=BEC)として知られる状態を作り出し、負の質量の条件を整えた。BEC状態では、粒子は量子力学の法則に従って極めてゆっくりと動き、波のように振る舞う。粒子は、エネルギーを失わずに流れる超流動体となって、同期して運動する。

WSU物理天文学部教授のピーター・エンゲルス(Peter Engels)氏が率いたチームは、レーザーにより粒子の速度を下げて冷却し、熱い高エネルギーの粒子は蒸気のように逃がし物質をさらに冷却することで、このような条件を作り出した。

レーザーは、幅100ミクロン未満の粒子を計測するボウルを使うように、ルビジウム原子を捕捉する。この時点では、ルビジウムの超流動体は通常の質量を持っている。ボウルを破壊するとルビジウムが飛び出し、中心部の原子が押し出されて膨張する。

負の質量を作り出すために研究チームは、別のレーザー一式を適用して原子を前後に動かし、スピンの向きを変えた。ここで、ルビジウムの飛び出す速度が十分に大きければ、負の質量を持っているかのような振る舞いを見せる。

「押すと、逆方向に加速する」と、システムを解析する理論家を演ずるようにフォーブス氏は話す。「ルビジウムは、見えない壁にぶち当たっ(て跳ね返っ)たように見える」。

◆潜在的な問題の回避

研究チームが用いた制御テクニックにより、以前の負の質量を探る試みで生じていた基本的な障害を回避することができたという。

「これまでと違うのは、負の質量の性質を、他の複雑なことは使わずに程よく制御できたことだ」とフォーブス氏は話す。今回の研究は、他のシステムで見られた同様な振る舞いを、負の質量に関して明確化することになった。

制御スキルが高まったことで、類似の物理学や天体物理学、特に中性子星やブラックホール、ダークエネルギーなど、実験が不可能だった宇宙論的現象の研究に新たなツールが与えられた。

「非常に独特だが基本的な現象の研究に、新たな環境を提供するものだ」とフォーブス氏は述べている。

【情報ソース】

Physical Review Letters - Negative-Mass Hydrodynamics in a Spin-Orbit - Coupled Bose-Einstein Condensate
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.118.155301

Washington State University - ‘Negative mass’ created at Washington State University
https://news.wsu.edu/2017/04/10/negative-mass-created-at-wsu/

Science Alert - Physicists Say They've Created a Fluid With 'Negative Mass'
https://www.sciencealert.com/physicists-say-they-ve-created-a-fluid-with-negative-mass

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