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【科学ニュース】米科学アカデミー、労働環境変化への政策提言

ロボットに自分の仕事が奪われないか? そうした疑問を持つ人が増えているが、政府当局はこれに対して理にかなった答えを返せるだけの情報を持っていない。米国立科学工学医学アカデミー(NASEM)の新しい研究はそう述べている。

「政府は、第4次産業革命と言われる状況に“無視界飛行”で突入しようとしている」と、NASEM研究の共著者でカーネギー・メロン大学コンピューター科学部のトム・ミッチェル(Tom M. Mitchell)教授、およびマサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院のエリク・ブリンヨルフソン(Erik Brynjolfsson)教授は述べる。

ミッチェル氏とブリンヨルフソン氏は、政府機関は、労働に関するさまざまなデータを集め、コンピューターとロボット工学が労働環境にどのような影響を与えるかを正確に調べて予測する必要があると述べる。それができなければ、良くて機会の喪失、悪くすれば悲惨な結果となるだろうという。

「Information Technology and the U.S. Workforce: Where Are We and Where Do We Go From Here(情報テクノロジーと米国の労働人口:現在の位置と将来)」と題された両氏の研究論文およびコメンタリーは、Nature誌に4月13日付で発表された。

情報テクノロジー、人工知能、ロボティクスは、ほぼすべての職業に影響を及ぼしているが、個々の職場にその影響がどのように現れるかは必ずしも明確でない。多くの人がテクノロジーによって職場を追われ、一方で他の仕事の需要は増大するだろう。新しい産業が生まれ、まだ想像もできない仕事が作り出されるだろう。

NASEMの研究報告では、こうした将来の影響は、既に見えている状況より大きくなりそうだが、テクノロジーによって労働人口を大きくなるのか小さくなるのかについて断定的に述べるのは難しいとしている。

「労働人口とオートメーションの正確な状態については情報とデータの不足が著しく、“仕事に対するインパクトが現時点で最も大きいのはどのタイプのテクノロジーか”、あるいは“この2~3年で最も大きなインパクトを与えるのはどの新しいテクノロジーか”といった基本的な質問に対しても、為政者には答えが出せない」とミッチェル氏は話す。

「今回のNASEMの研究報告は、テクノロジーが労働人口に及ぼすプラスの影響とマイナスの影響について詳述している。これには、一部の仕事はオートメーションに置き換えられること、UberやLyftのような企業において新しいタイプのフリーランスの仕事の機会が作り出れること、またインターネットを通じて誰でも教育と再訓練が受けられるようになることなどが含まれる。しかし、こうしたさまざまな動きが労働人口に与える相対的な影響、あるいは全体的な結果について、現段階では誰も判断できない」。

こうした労働人口に対するテクノロジーのさまざまな影響をよく理解するためには、さらなる調査が必要になる。オートメーションは、一部の作業については人間より優れているが、すべての作業についてではない。例えば、ルーチン化された情報処理操作や手仕事はすぐにでも自動化されるが、創造性の高い適応力のある人や対人スキルの高い人は留まるだろう。それにともない、一部の仕事は再編成され、今は認識されていないか直接的な対価が払われていない一部のスキルは価値が高まるかもしれない。

NASEMパネルは、学生には労働人口の絶えざる変化への準備を促し、学校には職場環境で機械と差別化できる個々人の固有な人間的特性に注目することを推奨し、将来の経済を牽引する分野での訓練の必要性を強調している。

同パネルでは、この調査には新しいデータソース、メソッド、およびインフラストラクチャーが必要であると述べている。Nature論文のコメンタリーでミッチェル氏とブリンヨルフソン氏はさらに、政府が統合的な情報戦略を作成し、公的に保持されているデータと私的に保持されているデータを統合することを求めている。

「政府・自治体は、どうすれば爆発的に増え続けるオンラインのリアルタイム・データを活用して、より魅力的な製品を開発し、より効率的な経営方針を策定できるかについて、産業界がこの10年で学んできた内容を把握しなければならない」とミッチェル氏は話す。

同じように両氏は政策立案に関して、現在の「計画して実施(plan then implement)」というパラダイムから、より反復的な「認識して対応(sense and respond)」のパラダイムへ移行する必要性を示し、新しい政策のインパクトをモニタリングして効果を計測し、インパクトの観察結果に基づいて政策を最適化して適応しなければならないと述べている。

【情報ソース】

NASEM - Information Technology and the U.S. Workforce: Where Are We and Where Do We Go from Here?
https://www.nap.edu/catalog/24649/information-technology-and-the-us-workforce-where-are-we-and

Phys.org - Policymakers 'flying blind' into the future of work
https://phys.org/news/2017-04-policymakers-future.html

National Academies of Sciences, Engineering and Medicine (NASEM)
http://www.nationalacademies.org/ 

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