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【科学ニュース】哺乳類:種の寿命は脂質代謝のタイプで決まる?

脂質代謝のタイプと生物種の寿命の間に相関関係のあることが、新しい研究の結果から明らかになった。Scientific Reports誌に発表された論文で、国際研究チームは複数の動物種について寿命と脂質代謝の特殊性の間に見られた相違を説明している。

動物はなぜ種によって寿命に差があるのか、まだ明確な答えは得られていない。例えば、イヌは長くて十数年しか生きないが、サイズは近くてもカメはイヌの何倍も長生きなのはなぜなのか? 今回の研究チームは、脂質がどのように代謝されるのかが寿命と何らかの関わりがあるのではいかと考えた。

研究チームは、動物種の平均寿命ではなく最大寿命に注目した。最大寿命は、動物種ごとにかなり安定した特性といえる。この数百年で人間の平均余命は大幅に伸びたが、最大寿命は120歳前後のままで変わっていない。寿命を伸ばそうと考えるなら、最大寿命が何によって決まるのかを理解する必要がある。

脂質は、有機溶媒には溶けるが水には溶けない脂肪酸または炭化水素鎖を含む生物由来の物質と定義され(古典的定義:これに当てはまらない脂質もある)、ほとんどの生物に見られ、多くの場合エネルギーの保存に使われている。細胞内で脂質が分解されるときに脂質代謝が起こり、蓄えられていたエネルギーが放出され、身体の各部で使用される。動物が体内で行っているさまざまな形の脂質代謝については以前から知られていたが、脂質代謝と寿命との関係を解き明かした研究はこれまでなかった。

種によって最大寿命は大きく異なる。近縁の種であっても、その差が10倍に及ぶ場合さえある。この違いをもたらしている仕組みについては、まだ何もわかっていない。研究はロシアの大学院課程を含む研究機関、スコルテック(Skolkovo Institute of Science and Technology)のフィリップ・カイトビッチ(Philipp Khaitovich)教授が主導し、ロシアの他に米・独・仏・中・南アの研究者による規模の大きい国際チームが、哺乳類35種の脳、腎臓、肝臓、心臓、筋肉の脂質を分析した。質量分析と生物情報工学的解析により、種ごとに異なる組織間の脂質組成の違いを明らかにした。その結果は、種の脂質代謝と最大余命の間の関係を示している。

また研究チームは、脂質の化学組成も寿命にとって重要であることを報告している。例えばスフィンゴ脂質などの細胞膜内の複合脂質は、長寿の種では水素によって飽和脂肪が多くなる。研究チームはこの現象の理由が、こうした複合脂質の安定性と、老化において細胞に影響する継続的な酸化ストレスに対する抵抗力にあると考えている。エネルギー関連脂質については、この相関関係が逆になる。長寿の種では、不飽和の(二重結合を持つ)エネルギー関連脂質が短命な種より多い。これは、不飽和脂肪はエネルギーに変換するのが飽和脂肪に比べて難しいためで、速度の低い代謝が長寿種の特徴のひとつであると論文は述べている。

共著者でスコルテックの研究科学者エカテリーナ・カラミーバ(Ekaterina Khrameeva)氏は、「寿命と脂質代謝の特性との関係を明らかにすることができた。この結果はそれ自体で興味深いものだが、得られた35種の哺乳類の脂質データはさらに重要だ。これらのデータは、脂質(およびその代謝)の進化を研究する上で完璧な資料となる。いま既にその研究に取り組んでいる。これまで、脂質の進化が研究されたのはわずか4種についてだけだった。今回の35種のデータから、新たな興味深い研究結果が得られるだろう」。

【情報ソース】

Scientific Reports - Lipidome determinants of maximal lifespan in mammals
http://www.nature.com/articles/s41598-017-00037-7

Skoltech - Lipid composition is associated with the lifespan
http://www.skoltech.ru/en/2017/03/lipid-composition-is-associated-with-the-lifespan/

MedicalXpress - Link found between types of lipid metabolism and species lifespan
https://medicalxpress.com/news/2017-03-link-lipid-metabolism-species-lifespan.html

TASS - International scientists unveil link between lipid metabolism and lifespan
http://tass.com/science/934628

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